アドレナル・ファティーグを知っていますか?
ジェームズ・L・ウィルソン博士
米国抗加齢医学会ではアドレナルファティーグ(副腎疲弊)という概念が注目されています。抗加齢医学的な治療法であるホルモン補充療法やビタミン補充療法などを行う際には必ずアドレナルファティーグの治療を優先するように、米国抗加齢医学会が指導するほど重要視された概念であります。1990年代に米国の医師であるジェームズ・L・ウイルソンによって提唱された概念であります。現在アドレナルファティーグは米国のみならず、欧州の抗加齢医学会でも関心を持ち、米国では戦地から帰国した兵士のストレスの治療にも応用し始めております。アドレナルファティーグは決して医学的に認められた疾患群や症候群ではありませんが、抗加齢医学の臨床現場では参考になる概念です。
アドレナル・ファティーグとは何か?
副腎機能低下は、現代社会ではよく見られる〝疲労〟という症状を招きます。この概念は、二十世紀を通し、非アジソン病副腎機能低下、無症状性副腎機能低下、神経衰弱症、副腎神経衰弱症、副腎無気力症、副腎疲労症候群などの多くの名で知られてきました。これらを総称して「アドレナル・ファティーグ」と定義します。アドレナル・ファティーグは、米国および世界中の何百万という人々を苦しめていると想像されます。
深刻なアドレナル・ファティーグは、副腎の活動が非常に弱まっているため、ベッドから起き上がることが困難になり、副腎機能が弱まるたびに、体内のすべての器官や臓器が甚大な影響を受けます。炭水化物・たんぱく質・脂肪の代謝、水分や電解質の平衡、心臓と循環器系、そして性欲にさえ変化が起こさせます。生化学や細胞レベルでも他の多くの変化が生じ、副腎が疲れていると体型さえも変化します。
疲労は、副腎機能低下の代表的な症状であるが、非常にありふれた病状であるために、患者が疲労を訴えた場合に、医師が他の数多くの疾患から鑑別し、副腎に関連した診断を下すことは非常に困難であります。非アジソン病副腎機能低下に関する情報は百年以上前から医学文献に載っていたが、現代社会では患者が明らかにアドレナル・ファティーグの典型的な症状を示していても、軽症な副腎機能低下は見逃されたり、誤った診断が下されている可能性があります。患者が疲労を感じている原因の中に、アドレナル・ファティーグであることが非常に多い。
アドレナル・ファティーグは、種々の兆候や症状が集まったものである。アドレナル・ファティーグを患う人々は、周りの人からは気づかれにくく、明らかな身体的な兆候がないかもしれないが、本人は調子が悪く、漠然とした体調不良や「はっきりしない」感覚を抱えて生活しています。コーヒーやコーラを飲んだり、他の刺激剤を使って、力を振り絞っていることが多く認められます。
副腎(アドレナル)は、体がストレスに対処し、生き延びるのを助ける
副腎は「ストレスの腺」として知られています。ケガや病気、仕事や対人関係の問題に至るまで、ありとあらゆるストレス源に体が対処できるようにするのが、副腎の仕事であり、回復力、エネルギー、耐久力、そしてまさに生命そのものが、副腎の正常な機能にかかっています。
しかし、副腎ホルモンが健康や身体機能に与える影響は、もっと多様で、甚大で、広範であります。副腎から分泌されるホルモンは、体内の主要な生理的過程のすべてに影響を与え、炭水化物と脂肪の利用、脂肪とたんぱく質のエネルギー変換、貯蔵された脂肪の分布(特に、ウエスト周りと顔の両側)、正常な血糖調節、適切な心臓血管と消化管の機能に緊密に影響します。副腎から分泌される抗炎症性および抗酸化ホルモンの保護作用は、アルコールや薬物、食物・環境のアレルゲンに対す反応を最小限に抑えるのにも役立っています。
中年以降(女性は閉経後)、副腎は、性腺に変わり、体内を循環する性ホルモンの主要な内分泌腺になり、これらのホルモンはそれ自体が、性欲のレベルから体重増加傾向まで、多くの身体的、情緒的、心理的効果を持ちます。副腎は、病気の発症リスクや慢性化などに影響を及ぼし、病気が慢性的であるほど、副腎反応はより重要であります。
副腎機能低下とは何か?
正常に機能している副腎は、微小だが正確でバランスの保たれた分量のステロイドホルモンを分泌します。しかし、体内の身体的、精神的、心理的環境の変化に非常に敏感にできているため、つねにこのバランスは変化しています。つまり、身体的、精神的、心理的環境のストレスが多すぎれば、副腎を消耗させ、結果として副腎ホルモン、特にコルチゾールの放出が減少することになります。この低下した副腎作用(副腎機能低下)は、アドレナル・ファティーグ(副腎疲労)の結果として起こるのだが、機能低下の症状は「ほぼゼロ」から「ほぼ正常」まで様々であります。